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娯楽やお役立ち情報、人生で学んできた事やIT系(RPAメイン)の知識情報を気まぐれで発信していきます。twitter→@RPA_AI_it

【RPA(UiPath)】RPAの推進組織 CoE(Center of Excellence)について徹底解説!

今回はRPAを推進していく中央組織であるCoE(Center of Excellence)について、解説していこうと思います。CoEって何?どんな事をしているの?何故必要なの?どうやって作ればいいの?失敗事例は?成功のコツは?を知りたい方向けの内容となっております。現在CoEに関わっている方もCoEに携わっていない方も視野を広げる事ができると思いますので、是非今後の活動のご参考にして頂ければと思います。

 

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【目次】

 

CoE(Center of Excellence)とは?

CoE(Center of Excellence)とは、組織を横断する取り組みを継続的に行う際に中核となる、部署や研究拠点の事です。RPAだけを横断的に取り組む組織ではなく、RPA以外の分野も中核として担っているケースもあります。また、組織横断的なクラウド管理や運用を行う「クラウドCoE」やAIに特化した「AICoE」やデータ管理に特化した「アナリティクスCoE」といったものも登場してきており、組織間の連携やナレッジ共有の重要性が新たな技術の進化によって、これまで以上に重要となっており、今後更に重要性が増してくる組織(役割)だと思います。CoEをインターネットで検索すると企業だけの情報ではなく、大学の研究機関のCoEが出てきたりします。

 

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RPA CoE(Center of Excellence)の仕事内容

続いて企業におけるCoEの仕事内容をRPA版で説明していきます。現在のRPA CoEの仕事内容を私が全て書き出したものが下記のものになります。

 

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RPA CoEの場合、RPA化を検討する際に、RPAでやる必要があるのか?システム改修や他の手段で解決した方が良いのではないか?を検討するため、BPR(ビジネスプロセスエンジニアリング)やBPM(ビジネスプロセスマネジメント)に関わる事もあります。「なんのためにRPAを使うのか」「自社のIT戦略にどう紐づくのか、達成基準は何か」の戦略検討からリスク対策、必要なルール作りや組織運営、各種管理や啓蒙活動、開発者のフォローまでかなり多岐に渡る業務内容を多くの関係部署とコミュニケーションを取って進めていく必要があります。一人でこれらを行っている猛者もいらっしゃるようですが、規模の大きさに応じて適切な人のリソースを割く事が必要となります。

 

上記作業を行うのにどのような職種の人達が必要になるかは下記UiPathの公式サイトに説明ありますので、こちらをご参照下さい。

 

www.uipath.com

 

推進者がいない/不足しているとどうなってしまうか

上記のような推進者がいない又は組織がない場合どのような事になってしまうのかを説明していきます。下記によく起こる問題を8つ例で記載しておりますが、複数部署で同じ失敗を繰り返す等問題が発生して、導入や運用が上手くいかなくなったりします。最終的にはこれらの問題が積み重なってくると、RPAを上手く活用する事ができず、取り組みが一旦中止や終了してしまう事に繋がります。

 

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上記のようなケースを事前に防ぎ、発生し始めた際に事後対策を行い、部門横断的に成功/失敗事例の共有や管理を行っていく事で、RPA導入を成功に導く人や組織が必要となってきます。それがRPAを推進する組織であり、CoEとしての役割・責任となります。

下記に上記の問題に対する対応例を赤字で紹介します。真の原因や状況によって、対応の方法は変わってくるため、この対応例が絶対の正解というものではないです。対応の例として参考にして貰えればと思います。

 

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RPA CoEの組織の構築パターン

RPA CoEの組織をどうやって作っていくかのパターンについて、説明します。構築パターンは大きく下記のパターンが存在します。

 

モデル① ボトムアップモデル(部門主導・分散型) 本来CoEとは呼べないもの

各部門が主体となって、業務改革を実施しその手法の一つとしてRPAを利用。全体管理している組織は存在しておらず、各部門間で連携が必要な部分は連携していく必要があるモデル。

 

モデル② トップダウンモデル(CoE主導・集中型)

情報システム部門や専門組織が業務改革を部門横断的な視点も持って行い、その手法の一つとしてRPAを利用。CoEが開発、運用、保守などを全て行うモデル。

 

モデル③ ボトムとトップダウンのハイブリットモデル

上記①に加えて情報システム部門や専門組織が業務改革を部門横断的な視点も持って行い、その手法の一つとしてRPAを利用。CoEと各部門間で役割と責任を分担して、開発、運用、保守をしていくモデル。

 

【各モデルのメリット・デメリット】

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各部門主導のみに任せていると、部門毎にルールが統一されていなかったり、成功/失敗事例が共有されていなかったり等の問題が起きるため、全社CoEを設置しない場合はナレッジ共有やコミュニケーションが取りやすい環境を早い段階で用意する事は重要です。モデル①は冒頭のCoEとは?で説明している「CoE=中核となる、部署や研究拠点の事」とは言えないので、CoEのモデルとは言えないと考えます。

 

RPAを自由に扱わせる事にセキュリティ面等で懸念がある場合は、仕組み的に事故を起こさないように機能を制限を行う、又は監視する仕組みが整備できるまでは、全社CoEのプロ開発者が開発を行う方法を取る選択肢の候補が高くなる傾向があります。RPAを従業員のITリテラシー向上や組織文化の改革の一環で使ってもらう事を目的としている場合、ハイブリットモデルで、全社CoE側でトレーニングやリスク対策を行うか、部門内でもこのような活動が行える人の下で利用を許可する等が必要になってきます。

 

最初はモデル①で始めるのは良いと思いますが、他の部署でも使っていこうという動きがあったり、他の部署も使った方が良いという判断になったりした場合は、全社CoEの役割を会社内に持たせる事は、RPAの取り組みを成功させるためには非常に重要なポイントになります。全社CoEが無い場合、前述で記載されているような問題が発生し、会社内で混乱や問題が起きてしまう事に繋がります。ずっとモデル①のままでは、CoEとしての役割を果たす事は非常に難しいため非推奨と考えます。

 

上記のパターン以外の観点として、全社CoEを立ち上げる場合に新規の組織として立ち上がるか、既存の部署に役割を追加するかの判断が必要になってきます。既にDX推進組織がある場合や情報システム部門に最新技術の推進の役割を持たせる組織構成にする場合、既にある組織内に役割を追加する事もできます。新規組織として立ち上げた方が新しい取り組みは進めやすい一面がありますが、情報システム部門と密接な連携がRPAのCoEは必要になってくる場合が多いため、情報システム部門との関係性が良好である必要があります。新規か既存組織かどちらにCoEの役割を持たせるかは、CoEの仕事内容紹介で上げているような作業を自社だと新規と既存のうちどちらの方が上手くやっていけるか考えて決めていく必要があります。


下記キーマンズネットさんの記事の中で、RPA推進をどこの部署が担っているかのアンケート結果の記事があり、その中では情報システム部門が半数以上で一位、続いて利用部門が3割の結果となっています。利用部門に全て任せるモデル①のままでいるのは前述で記載している通り非推奨となります。ある程度の規模になり、部門横断的な役割が必要なタイミングでCoE機能を組織に取り入れる事を開始する事をお勧めします。「Power Automate for desktop」の登場で、RPAのルールについてや扱い方の問い合わせが現場から上がってきている企業は多くあるのではないでしょうか。今後これらのツールを上手く扱っていくためには、どこかにCoEの役割を持たせる必要性が出てきます。

 

RPA導入成功と失敗の差はどこで生まれる? 導入企業から学ぶ“転落ポイント” - キーマンズネット (itmedia.co.jp)

 

 

上記のモデル②、③を決めたら、更に何を誰がどこまでやるのか、許可させるか、責任を持たせるかを決めていく必要があります。決めずに運用していくと、プロセス毎に運用のやり方や責任範囲が違ったりして、保守・運用が複雑化して属人化の原因になったりかなり大変になったりします。結局再整理しないとどうにもならない状態に最終なってしまう可能性が高いため、早い段階で関係者の役割や責任範囲を定義して進めていく事が重要です。一度決めたルールに修正が必要であった場合、見直せばよいのですから。一番初めから完璧な組織やルールを作る事はほぼ無理なのではないかと思います。モデル②からモデル③に徐々に広げていくやり方もあります。

 

役割の決め方のサンプルはRPA 総研さんの下記記事に存在しておりますので、こちらを参考にして頂くのが良いと思います。

rpasouken.com

 

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起きやすいCoE構築の失敗事例

起こりやすいCoE構築の失敗事例を紹介していきます。

 

事例①:必要なスキルを持った人材が揃ってなく、どこかで重大な問題が起きる

例えばOrchestrator導入をオンプレ環境に構築したが、サーバーやこのようなアプリの扱いに慣れている人(インフラの知見や技術を持った人)をチームに参加させなかったり、基盤チームに依頼しなかったりして、初心者にやらせて問題が起きてしまう事があります。

⇒やりたい事に対してどんなスキルが必要になるのか検討して不足している役割がある場合、人が育つまでに一時的にも詳しい人に参画して貰うか、外部の力を借りるか検討が必要ですプロセス数が増えてから、整備していく事はとても労力が掛かります。

 

事例②:CoE推進リーダーが他の業務と兼務して、多忙になり問題が起きる

⇒部門CoEは規模と役割に応じて、兼務も可能かもしれませんが、全社CoEとして本気でRPAに取り組んでいくのであれば、リーダーを兼務させる事はマネジメントが疎かになったり、スピード感が落ちたりするため、お勧めしません。またリーダーはプロジェクトマネジメントの経験者であることが望ましいです。

 

事例③:部門との役割や責任範囲が不明確で、CoE業務が複雑化する

⇒開発のフェーズでCoEと業務担当者は何の作業を行うのか、何に責任を持つのか、ロボットをリリースした後、誰が正常/異常の確認を行うか、障害時に誰がどこまで何を対応するのか、標準を整えていかないと、プロセス数が増えていくにつれて運用が複雑化し、保守/運用に多くのリソースが取られていくようになってしまいます。

 

事例④:開発を担当(実施者)のエンジニアに丸投げする

丸投げにより、各開発者に好きなように開発や運用をさせて作業が属人化する。

CoEは品質を一定に保つ事や、標準化する責務があります。丸投げはやめましょう。   

 

事例⑤:ルールやガバナンスを厳しくし過ぎて開発が進まない、工数が多く消費される

一番始め方から完璧な姿を目指し過ぎて、ルールや制約が多すぎて新規参画者が増えなかったり、自分には無理だと諦めてしまったりする人が続出して、広がっていかないケースです。

⇒一番始め方から最適解のルールや運用を作る事はほぼ不可能だと思います。ですが、何も考えずにツールだけばら撒く事もリスクだらけになるため、非推奨ですどんなリスクがあるか考えて、ここだけは死守する。そのために何が必要か更に考えて、対策を実施しつつ最適なルールや運用を作っていく事が重要になります。開発者のレベルに応じて扱っていい業務範囲を絞り、レベルに応じて守るべき規約やドキュメント粒度を変える等の工夫が必要です。

 

RPAの開発や実行時によくあるリスクの情報を別の記事で纏めていますので、どんなリスクが起こりうるのか詳細知りたい方はこちらの記事も参考にして頂ければと思います。

 

syachiku-inu.hatenablog.com

 

 

 

事例⑥:反対意見を基本無視して無理やり推進していく

改革や改善を行う際に、反対勢力は必ずといって出てきます。しかし、この反対勢力は全てが敵ではなく、反対勢力の中には、ちゃんとした理由を持っていて、会社をよくするための意見を持っている事があります。これらの意見を全く聞かずに無理やり導入していくと、意見を聞いていたら事前に対策できた事で大きな失敗をしたり、中々広がっていかない原因にも繋がってきます。それが原因で優秀な人材が会社を離れていってしまうケースもあります。反対している勢力は何故反対しているのか、反対理由を何か対策する事によって、肯定的に変える事はできないのか、向き合う事でより良い結果に繋がる可能性が高まります。

 

IT分野を中心とした調査/助言を行う企業で有名なGartnerが避けるべき自動化の誤りを10個公開しておりますので、こちらの情報も参考にして頂けると良いと思います。

 



www.gartner.com

 

 

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大きく成功しているCoEの共通成功要素

続いて私の考える大きく成功している企業の共通成功要素を紹介していきます。

 

成功要素①:RPAを使った明確なビジョンや目的が存在し、関係者に浸透している

これは様々なメディアが口を揃えていっている事ですが、私も一番大事な事だと思います。「RPAを使って、現状をどう変えたいのか、将来どうなりたいのか、そのために何をするのか」を考え、その目的が伝わっていないと、人はついてきません。また間違った目的で使い始めていく人達もでてきたりもします。RPAに関わる人達が「RPAの取り組みを成功させたい」という気持ちを持っているか否かは非常に重要なポイントになります。全員は難しくても各現場のキーマンは必ず目的意識を持っている必要があります。概念検証や事例を参考に現状のRPAでやれる範囲、やれない範囲を見極める事も重要です。扱いになれていないのに、いきなり大きな最適化やリスクの高い業務を自動化しようとすると高確率で失敗します。

 

 

成功要素②:優れたリーダー、PMの存在

優れたリーダーやPMがいる場合、起きやすい失敗事例を事前に対策して防いだり、上手くいかなくなり始めたら、軌道修正したり、成功要素を知らずとも軌道修正できていたりします。この優れたリーダー、PMはITにすごく詳しい人でなければいけないわけではなく、ビジョン/目的等戦略を考えられ、時代の流れに対してのアンテナが高く、会社/組織の事を真剣に考えていて、コミュニケーションや交渉力に長けており、情熱を持っている人であると考えます。会社内で人望が厚い、各所のキーマンと直接話せるような人だと更に適任です。(チーム内にITに詳しい人は必要です)

 

成功要素③:成功要素①を達成するために必要な人材を定義して組織を作っている

決めた目的を達成するためにどんな人材が必要であるかを考え、CoE組織を作っていく必要があります。成功している企業は、現状と将来に必要になる人材を考えて、採用や育成をして、外部に任せる部分を定義してパートナーやコンサル企業に上手く利用しています。重要な作業が自社だけの力で解決できない場合、外部に早めに頼った方がトータルのコストは安く収まるケースが多くあると感じます。

 

成功要素④:現場に寄り添っている、組織間の風通しが良い

現場から自動化要件をヒアリングするにしても、現場に開発できる存在を育成して市民開発の取り組みを始めていくにしても、現場の状況を考慮したり、相談し易い環境を整えたり、現場の人の事を考えて推進したり、ちゃんと現場の人と接する事で信頼も得られ、協力的になり取り組みを上手く進んでいる組織は多いと感じます。自動化の依頼をくれる人達(業務担当者)を「内部顧客」として定義し、内部顧客の満足度を向上させる事に意識していく事で、上手く連携や関係者のバランスが取れていけたりもします。社員全員が顧客志向で働く事は難しいため、この業務担当者を「顧客(内部)」と見立てるのは良い対応だと思いました。内部顧客の満足度が高くなる事で、結果として外部顧客へのサービスの質の向上にも繋がると思います。

 

成功要素⑤:各関係者が情報共有やコミュニケーションが取れる場所が存在する

どこかの部署で困って解決した事は他の部署でも同じように困っているケースが多いです。Windows等のOSや共通で使っているシステムが絡んでいると、同じ問題が起きます。この時に情報を共有し合ったり、どこかで解決した内容をナレッジとしての共有する事で、生産性が向上します。「このまま進んで大丈夫かな?」と担当者が悩んだ時に相談できる環境が整っている事で、そのまま進んでいたらセキュリティ事故やその他のリスクを起こしてしまう可能性がある事を未然に防ぐ事ができている組織のケースもあります。リスクを未然に防ぐ観点でも、相談できる環境がある事は重要です。

 

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これからのRPA CoEの行方

これまでパソコンやインターネットの登場で技術革新が起き、働き方が大きく変わっていった時代がありました。現在ここに更に新しい技術の登場により、また働き方が変わってきている時代になってきています。

 

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RPAについては、AIとの連携がもっと進む事で下記のクラス3へ進化していく事が予想されます。RPAのCoEチームは今後このような更に高度なRPAをどう扱っていくか考え、導入の推進をしていく役割を担っていくと考えられます。UiPath社は2021年の自社イベント「UiPath Reboot Work Festival」でロボットが業務を自己学習する「セマンティック・オートメーション」の世界観を発表していました。今後自動化可能な範囲や開発の容易さが更に向上していくかもしれません。UiPathはこれまでずっと製品成長スピードが速かったですが、今後もしばらくはこのスピードに付いていくのがCoEとしてまず必要な事かなと思います。バージョンアップを無理に急がず状況を把握して、追加された機能は必要なものなのか判断したり、利用タイミングを調整したり他の技術や製品の状況を把握して、ソリューションを見直す事が必要になってきます。

 

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【引用元:総務省|情報通信統計データベース|RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上) (soumu.go.jp)

 

技術革新はRPA以外にも起きており、RPAのCoEと同じような先端技術を推進していく組織が複数新たに立ち上がったり、既存の組織に役割として追加されていったりする事も考えられます。直近でいうと2022年のガートナーの戦略的テクノロジーのトップ・トレンドで上がってきているような技術を推進していくような役割が新たに追加されていく流れになっていくと思います。いきなり難易度の高い事は失敗する可能性が高いので、これからRPA以外でも必要になってくる可能性が高い、CoE(役割)の組織を予め作っておく事は、今後の先端技術活用の部分でも優位に立つ事ができる部分だと思います。

 

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RPAは上記のトレンド内の中では「ハイパーオートメーション」の中に位置しています。ハイパーオートメーションとは「可能な限り多くのプロセスを迅速に特定し、検証し、自動化することにより、成長の加速とビジネスのレジリエンス向上を実現する取り組み」の事で下記の様な技術要素で構成されると言われています。UiPathを軸に考える事ができるものも多くあるため、今後RPA CoEに関わってくる可能性が高いもの(既に他チームが推進している可能性も有)と考えられます。ハイパーオートメーションの世界観やどれが現在のUiPathに存在しているものなのか等は別途解説の記事を書こうと思います。将来的に全てUiPathのカバー範囲となる事は可能性としてゼロではないかと思います。

 

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RPA CoEのお役立ち情報

RPA CoEを既に推進されている方やこれから作っていく方、チームに参画する方が知っておくと便利なお役立ち情報を紹介していきます。(無料で凄い情報が手に入る恐ろしい時代、、)

 

①「UiPath公式 導入メソドロジー2.0」 おすすめ度 ★★★★★(5)無料

UiPath社の公式が出している方法論とドキュメントテンプレート集です。UiPathを導入した先人達のナレッジをUiPath社公式が集約し、「同じ苦戦をする企業を減らしたい」「ドキュメント部分の時間を効率化したい」という思いで作られているドキュメントだと思います。下記のようなフォルダ構成に分かれており、戦略立案やガバナンス構築、PoCからプロ開発、EUCそれぞれで役に立つ情報が纏められています。これが無料で提供されているのはすごい事だと思います。ヒアリングや自動化した業務を管理する一覧や課題管理表まで揃っています。これらのドキュメントをカスタマイズして使っていくのがお勧めです。足りない観点やドキュメントも存在したりするケースもあるため、現場に応じて新規で新たに作ったりする事や必要なドキュメントを取捨選択する事も必要です。UiPath以外の利用は規約で禁止されているので、注意が必要です。

 

 

【UiPathメソドロジーフォルダ構成】

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【03_UiPath導入メソドロジー(プロフェッショナル開発)フォルダ内】

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「参考資料」内に入っている資料は戦略的にRPA展開していく事について説明されているドキュメントが入っています。UiPath TodayのPick UPコンテンツにずっと配置されているアーカイブ動画の下記2つの内容がドキュメント化されて格納されています。CoEのチームに入る方は是非見て頂きたい内容です。資料だけではなく説明も聴きたい方はUiPath Todayを参照下さい。

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www.uipath.com

 

②「UiPath公式 RPAガバナンスガイドライン(第二版:2020年12月)」 おすすめ度 ★★★★★(5)無料

RPAを安全に導入や運用していくために気にすべき事や対策の立て方について、細かく説明されているRPAガバナンス(管理)構築のためのガイドライン(指針)です。UiPath社とPwCあらたという有名な監査法人の企業が共同で発行したものです。UiPathメソドロジーはこれからの観点を考えて作られているドキュメントではありますが、メソドロジーのドキュメントを修正したり、ルールを変更したりしていくためにはこれらの大本の知識や考え方も必要になってくる事もあります。CoEのルールやドキュメントを管理するような役割の人には読んで頂きたいものです。これを理解する事でリスク対策やコントロール能力を結構上げる事ができ、今後RPA以外の仕事についた時も役に立つと思います。RPAに関わる全員に知って貰いたい内容を「2_RPAガバナンス-ハンドブック_v2.0.pdf」に絞って纏められていますのでそれだけでも読んでみると良いかもしれません。

 

【RPA全体】

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【UiPath活用時のサンプル】

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www.uipath.com


③「日本ITガバナンス協会 -ITGI Japan」 おすすめ度 ★★★☆☆(3)無料

ITガバナンスのベスト&グッドプラクティス及び知識や研究成果を公開しているITガバナンス協会(ITGI, IT Governance Institute)のサイト。RPAガバナンスだけではなく、そもそもITガバナンスを知らず、既存のガバナンス把握から必要なような方向けにITガバナンスの理解をより深めるのに役に立つ情報です。

 

itgi.jp

 

④「UiPath公式 RPA導入プロジェクトの品質評価キットUiPathデリバリーアセスメント」おすすめ度 ★★★★☆(4)無料

自分達の会社のプロジェクトは考慮すべき観点を考えて、計画して実践できているのか、開発において一定ベストプラクティクスに近い状態で開発できているのか、を自己チェックするためのドキュメントです。こちらも観点足りないと思えばカスタマイズする事でより詳細なチェックを行う事もできます。定期的(半年~1年)くらいにチェックして、どこを改善したら良いのか、優先すべき整理検討事項はどこなのか、以前と比べてどこが成長したか等を確認していくと、目に見えて改善された点や足りていない部分の可視化を行う事ができます。

 

「チェックしてみたけど、どう改善していけば良いか分からない」や「現在の状態を見直す時間が取れない」ような状況である場合、パートナー企業やUiPath社の担当営業の方に相談すると費用は掛かってしまう可能性がありますが、チェックして改善点を提示してくれる事が可能だと思いますので、外部の力をここで使うのは、お金があれば結構お勧めです。

 

www.uipath.com

 

⑤「UiPath公式 UiPath Today (公式ウェビナー。アーカイブ配信有) 」おすすめ度 ★★★★☆(4)基本無料
UiPath社の公式ウェビナーサービスです。最新製品やRPAの進め方説明や事例展開等幅広い事を説明やディスカッションしているウェビナー公開サイトです。CoEに役に立つ有益な情報も公開される事があるため、月一位でチェックしてみると良いかも知れません。現在は無料動画だけの公開になっていますが、今後有料動画の公開も出てくるかもしれません。

www.uipath.com

 

⑥「UiPath公式 オートメーションの百科事典(英語) 」おすすめ度 ★★★☆☆(3)無料

UiPath本社のCoEが自動化した事例を整理して公開しているものです。各部署毎に事例が整理されており、CoEや各部署ではどんな事を自動化しているのか、を把握するのに非常に役に立ちます。四半期毎に情報を更新されていく予定だそうです。

 

view.highspot.com

 

上記のサマリーは四半期毎に公式ブログに公開されていっています。

www.uipath.com

 

⑦「政府CIOポータル デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」おすすめ度 ★★★★☆(4)無料

日本の政府のドキュメントになりますが、そもそもRPAガバナンスの前にITガバナンスって何?とかどんな事を考えて中長期計画立てていくのかや、各フェーズの進め方や注意点が纏められており、基礎知識や考え方の部分でとても参考になるドキュメントです。プロジェクト管理をするCoEのリーダークラスの方にお勧めです。リーダークラスではない人はITの導入部分のポイントを絞って実践的に使えるように用意された「デジタル・ガバメント推進標準 ガイドライン実践ガイドブック」をまずは読んでみると良いです。リーダーの人が何を気にしているか上位視点を知る事もできます。

 

「デジタル・ガバメント推進標準 ガイドライン実践ガイドブック」の中に「RPA導入実践ガイドブック」というものも存在します。RPAの概要や特徴、他技術との違い、導入の方法論が一つのドキュメントとして纏められています。誰かに教えたりする際や、自分の理解を深めるのに活用すると良いと思います。

 

これらはUiPath関係なく全RPA共通の事項が纏められている情報ですが、UiPath社はこの「RPA導入実践ガイドブック」に記載されている考慮事項に対して、UiPath社自体や展開している製品群がどのように対応しているかの見解やUiPathの詳細情報を調べられるようにリンク情報を付けた対応一覧の情報を公開しています。UiPathはどう対応しているのか調べる時に役に立つ情報です。気になる方は見てみると良いです。

 

www.uipath.com

 

cio.go.jp

 

⑧「リエンジニアリング革命」おすすめ度 ★★★★★(5)有料

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とは何なのか、リエンジニアリングについて最初に定義されたと言われている書籍です。内容は色あせない原理・原則が中心に説明されており、「古い原則から離れて、新しい原則を取り入れる」というリエンジニアリングの考え方は現在のDXとも共通する部分は多くあり、その概念・本質を理解する事ができるもので、業務改革や改善に関わる方は知識としてINPUTとしておいて損はない書籍だと思います。かなりお勧めです!

 

 

⑨「プロセス・イノベーション」おすすめ度 ★★★★★(5)有料

⑧「リエンジニアリング革命」の邦訳が発刊された翌年に邦訳された書籍。そもそもプロセスとは何なのか、現行プロセスの把握と改善方法や代表的なプロセスのイノーベーション戦略例の紹介があったりと、実践的な内容が多く記されています。個人的に⑧「リエンジニアリング革命」を読んでから更にこちらの「プロセス・イノベーション」を読む事で、リエンジニアリングについての理解や自分がこれからどう活かしていくか考えが整理しやすいと感じました。こちらも業務改革や改善に関わる方は知識としてINPUTとしておいて損はない書籍でかなりお勧めです!

 

 

⑩「図解CIOハンドブック 改訂5版」おすすめ度 ★★★☆☆(3)有料
企業の情報システム担当者(責任者)、経営者向けのIT活用の最新実務書です。RPA CoEよりも上位の組織や人がどんな役割を持っていて、どんな事を考えているか概要を抑える事ができます。CoEリーダーレベルの人が更に上位視点を知るために活用すると良さそうな書籍です。

 

 

⑪「抵抗勢力との向き合い方」おすすめ度 ★★★☆☆(3)有料
改革や改善を行う際に、必ずといって存在する抵抗勢力。この勢力との向き合い方について、説明されている書籍です。抵抗勢力に何故ちゃんと向き合う必要があるのか?やどう対処していけば良いかの参考になる書籍です。

 

 

 

⑫「カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで」★★★☆☆(3)有料
CoEのリーダーにアサインされたけど、どうやって組織を作り、管理していけば良いか分からない。ITプロジェクト経験した事がない!という経験が浅い人向けにチーム作りの進め方を実践的に説明している書籍です。組織作りの参考に良いです。

 

 

⑬「人事・教育担当者のための 能力開発・教育体系ハンドブック」★★★★☆(4)有料

RPAを展開していこうとした時に、どう教育していくかを考える時があります。全社的な取り組みで人事部も巻き込んで、人事制度を変えるところまで進んでいない場合は、CoEの誰かが研修プログラムを作ったり、教育体系を整理したりする役割を担う事が多いです。こちらの書籍は人材育成方針、能力開発・教育体系、教育計画づくりのための取り組み方や具体的な進め方・手順等の概要を抑えられるような構成で作成されており、一通り読んでおく事で、優れた研修プログラムや先を見据えた教育計画を立てるのに役に立ちます。教育担当の方やCoEリーダーの方にお勧めの書籍です。

 

 

⑭DX白書

情報処理推進機構が公開しているIT社会の動向を調査・分析して情報を整理してくれているレポートです。世の中のIT活用はどうなっているのか把握したり、RPAやローコード、ノーコードの活用目的をどうしようか考えたりするための知識として有益なものだと思います。

 

www.ipa.go.jp



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さいごに

RPACoEのリーダーには、既存組織に役割を追加する場合も、新規組織で立ち上げる場合も、組織作りやチーム作りの能力がリーダーには求められてきます。また、業務の人に開発まで任せていきたい(市民開発)場合、教育の観点やこれまでの企業文化の改革が非常に重要になってきます。今回紹介している内容は概要レベルで、推進をやっていると様々な細かい課題や問題に遭遇します。小さな失敗をしないで、完璧に進める事は非常に困難であるため、致命的なリスクを避けつつ思考錯誤しながら推進し、自社にとってのベストな推進の形を目指すための参考情報として、これまでの情報を活用して頂ければと思います。

 

難易度が高いお仕事ではありますが、人の成長に関わる事ができ、自分自身も様々な能力やスキルを身に付けたり、伸ばす事ができる、とてもやりがいを感じられるお仕事だと思います。チャレンジできる環境があれば、是非チャレンジしてみると良いと思います!

 

自動化を専門の仕事をやっていると人によっては自動化第一主義になってしまう事もあるため、「仕事(プロセス)」と「人」と「テクノロジー」にそれぞれちゃんと焦点を当てて、どれかに思考が偏りすぎないように注意しましょう!「なんでもかんでも自動化!自動化が偉いんだ!協力しろ!」では人はついてきませんし、達成したい目的もおそらく達成する事は難しくなってきます。

 

 

「推進者の仲間がほしい、、」「孤独でつらい、、」という方は、UiPathのユーザー有志によって運営される非営利の公式ユーザーコミュニティであるUiPath Friendsに参加してみるのをお勧めいたします。私も所属しています。下記の記事にコミュニティとしてどんな活動をしているか把握できるものがあります。2022年からCoEトークという取り組みが開始されるみたいです。

 

note.com




CoE以外にもUiPathに関わるノウハウを記事で纏めていますので、気になるものがあれば、是非参考にして貰えればと思います。

 

syachiku-inu.hatenablog.com

 

参考サイト

・RPA総研:RPAプロジェクトに必要なCenter Of Excellence (COE)組織とは? (rpasouken.com)

 

・デロイトトーマツRPA and Intelligent Automation|アナリティクス&コグニティブ|デロイト トーマツ グループ|Deloitte

ZDNet Japan:DXマネジメントオフィス入門 - ZDNet Japan